真夜中のデート~珍客万来 PART2~

ラーメン屋で働いていると色々な人が来る。
仕事帰りの会社員、学生、近くの飲み屋の従業員。
酔っ払い、深夜なのに子連れの家族。
喧嘩しながらも大盛りラーメンをたいらげるカップル。
注文をとりながら人間観察をするのもなかなか面白い。

で、先日の珍客。

深夜1時を過ぎて終電前のピークを過ぎた頃、1組の老夫婦ご来店。
ご婦人は明らかに歩行介助が必要。
はっきり言って立ってるのもやっと。
ダンナさんに付き添われて、一歩一歩足元を確認しながら歩いてる様子。
どうやら、視力もあまりよろしくない感じ。

席に誘導するものの、椅子に座るのシンドイのは明らか。
ラーメン屋の席にすわり心地を求められても困るが、そうは言っても、落ち着いてもらわないとこっちも話は進まない。

店側としてはバリアフリーにしてるわけではないし、介護用品を揃えているわけでもない。
他のお客さんに比べ一手間かかるのは正直な所。

だ・け・ど、

自分の本業はリハビリ屋さん。
ラーメン屋店員は仮の姿。
この手はお任せあれ!(自画自賛w)
歩行から着席までバッチリ介助し、足元が不安だったのでビールケースで即席の足置き台を設置。
夫婦共々安心したご様子で俺も一安心。
これで落ち着いて食事も出来るだろう。
いや~、良い仕事した(誉

で、落ち着いた頃にご婦人が喋りだす。

実はラーメンは好物なのだが、病気で寝込み足腰を悪くしてから他の人に迷惑がかかるから…と、外出を控えるようになり、益々悪くなったとか。(そりゃそうだ)
それでも、どうしてもラーメンが食べたくなり、比較的空いているであろう時間帯を狙って来たらしい。

そこまでして深夜にラーメン一杯を食いに来るとは…なんたる天性の食い意地(笑
しかしそれ以上に、そんなワガママを嫌な顔一つしないで、しっかりフォローしてるダンナが偉いなぁ…と。
しかも、食事の補助も完璧だし、何より終始笑顔。

…う~ん、泣ける話っすねぇ…夫婦愛ってヤツっすか?(涙

こっちとしては、ラーメン1杯で長居するカップルには(商売上)殺意に近いものを感じる事もあるわけですが、この夫婦は例外。
いくらでもゆっくりしていってください。
気分転換していってください。
なんならリハビリマッサージ&機能訓練もおまけするから、話聞かせてください。
…という気分。
このカップルは見ていて、ホントに心が温まる。羨ましさを超えた何かを感じる。

と、俺が一方的に盛り上がったところで、ラーメンを食い終われば用は終わったんだから帰るのは当然w
お会計を済ませた老夫婦は、また一歩一歩足取りを確認しながらゆっくりしたペースで家に向かう。
距離にして数百メートル。あびこ筋の向かいのマンションまで、どれくらいの時間がかかるのか?
まぁ、ダンナは「デートみたいなもんだ」と笑いながら言ってたのがまたかっこいい!

老夫婦が店を出るときに、つい「お大事にどうぞ!」と言ってしまいそうになったが、仮の姿とは言え、今はラーメン屋の店員。
その一言はまたの機会にいうとして…

「毎度、おおきに!!!またお願いします!!!」

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